カテゴリー: 月と太陽の傾き

なにも、かわらない。

『背教者ユリアヌス』辻邦生著
『沈まぬ太陽』山崎豊子著

この2冊を最近読んだ。辻邦生さんの描いたユリアヌスは悲しくも美しい。が、読み終えたあとの悲しさがなんとも重い。そしてそれは『沈まぬ太陽』にも共通しているかもしれない。どちらも実在した人、事件。

350年代のローマ帝国と1960〜90年代の日本。そして2011年の日本とクロアチア。私欲と策略だらけの嘘つき政府と大企業、心貧しきものが蔓延り、正しく生きようとする者が陥れられ虐げられ葬られるのが常。時代、国を越えても、それはなにひとつ変わらない。

さて、変わらないといえば、先日、階下のNちゃんが半年間のアメリカでのディズニー客船での仕事を終えて帰国した。客船での日々12時間の激務ですっかりシェイプアップされ、旅立ち前の半分ぐらいにスッキリと変わったNちゃん。

「次はいつ行くの?」
「少しゆっくりして、7月末に」
「帰って来て、どう?」
「やっぱりここにはもう住みたいと思わない。何も変わってないし、誰も変わってない。これからもそれは同じ」
「そだね、Nちゃんみたいにちゃんと前進して生きていきたいヒトにはね、よろしくない国だよね」

帰国してからかつての職場(税務署)の友人たちに会ったそうだが、彼女たちはNちゃんの出国前と相変わらずで、職場ですることといえばゴシップに暇つぶし、愚痴の言い合い。だけどそこから抜け出す術も力量もなく、変化を嫌い、そうやって一生が過ぎて行く。ぶっちゃけ、とてもクロアチアっぽい。外国で2年過ごしたのちにかつての職場に再就職したクロアチア人の知人がいるが、「2年も空けてて戻って来たのに仕事もメンバーもナニヒトツ変わってないって、すごくない?そこに戻れたのもそう。こんなこと他の国ではありえないよね。良くも悪くもクロアチアだなあって思ったよ」と苦笑していた。

Nちゃんが言った。
「出発前に購入したカメラや保証金、やっと払い終えたの。半年前アメリカに渡ったとき、ポケットには10ドルしかなかった」
「お母さんに聞いたよ。着いた先のフロリダのホテルでエージェントが未払いだった宿泊料の税金の分が払えなかったって」
「うん、そんな話し聞いてなかったし、しかも20ドルだったから・・・。事情を話したらホテルの支配人さんが見かねて替わりに払ってくれたの。その時にどこの国からと聞かれてクロアチアからと言ったら、20ドルが払えないようなそんな国にはもう帰っちゃ行けないよって言われた・・・」

そうなのだ。先進国の者にすれば「たったの」20ドルだが、東欧の小国クロアチアでは事情が異なる。ショップングモールでの洋服屋でのバイトの時給は20クナ、300円足らずだ。一日みっちり8時間働いても160クナ、2500円程度にしかならない。なのにカフェではコーヒが12クナ、190円前後、トラムの運賃は大人一人8〜10クナ、つまり時給の半額はする。先日回って来たメールに、貧困のためにトイレとシャワーのない家に住むクロアチア一家のために寄付を募るのものがあった。毎日の食もままならず子供たちは学校教育も受けれずにいる。その小さな平屋にトイレとシャワーを完備するのにいったいどれくらいかかるのかと思ったら、15万円ぐらいなのだ。わたしが今年帰省しなければいい額。しかしそれすらも、寄付がなかなか集まらない現状。

大好きなNちゃんがこれからも階下にいてくれたら、実際わたしはとてもうれしい。そうNちゃんに伝えた。「だけど、それはさて置き、Nちゃんはこんなとこにいたらあかん。時々お母さんに会いに帰って来る分にはいいけれど、アメリカでもオーストラリアでもカナダでもいい、船での出会いを大切にして、チャンスを掴んでほしい。お金がすべてじゃないけれど、ある程度の基準を満たした生活ができる環境にいることは大切。だからここには帰って来たらあかん」と付け足して。

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なにも、かわらない。” への4件のフィードバック

  1. なにも、かわらない人はずっと変わらない。
    でも、変わろうと努力する人はぜったいにかわる。
    きっとNちゃんは、努力が勝ったのね。えらい、Nちゃん。
    その気持ちでアメリカ(や、カナダや、オーストラリアや)に来る人は
    必ずや目標を達成し、そして次の目標を立て、ずっと前進してると思います。
    自国よりあっちの国の方がwelfareがいいから。。。
    そんな安易な考えでやってくる人で溢れております、この国。
    ま、母国の事情もあるのでしょうが、働かずしてwelfareはもらえないよね?
    NちゃんがもしNYに興味があるなら、ご連絡ください。
    お仕事の斡旋などはできませぬが、姉ちゃんとして側にいます。
    頑張る人は応援したいから。

    沈まぬ太陽、私も一気読みしました。悲しさもあったけれど、
    怒りの方が強かったかな。正直者が馬鹿を見る。くぅうううう〜!
    背教者ユリアヌスは、読んでない。見つけてみよ。

    1. ママさん

      そう、変わりたいと本当に思わないとね、なかなか変われない。
      Nちゃん、ほんまにがんばったのさー。また2週間後ぐらいには船に乗るって。
      NYに行くことがあればママさんに連絡するように伝えておきまーす。
      ありがとうさんです♪

      ユリアヌス、もし本屋さんにあったら読んでみて〜。
      上・中・下で長っ!とか思ったけど一気に読めてしまった。
      う〜ん、なかなかの良書でした。

  2. いいや、人は変われます。悪い方には簡単に。
    やる気のある人でも、周囲がダラダラだと直ぐに感染してしまうでしょうね。
    そちらの底辺に居る人達への行政や国の手助けは望めないん?
    今の僕は、過去の優勢だったことを思うと最低限だと思ってたけど、贅沢さえ言わなければ遊びの余裕はあります。勇気をもらっちゃたなぁ〜

    1. かっちゃん

      あ〜、悪い方にはあっという間に落ちますな・・・。
      ダラダラ病はほんとうに危険な伝染病。
      わたしもここで何度もその病魔にひっかかりました。(笑)
      行政ね〜・・・なんていうか、いちおう生活保護とかもあるけれど
      それでもそれでなくてもみんなけっこう苦しいというのが現実かなと。
      日本なんて天国でっせ。

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