カテゴリー: ユダヤ雑学, 勝手にレコメンデーション

『レ・ミゼラブル 輝く光の中で』(1995年製作 仏)

12月4日にBSで観た映画。ひとこと、名作。これほどにも見応えがあり、かつ美しい作品があまりにも人知れずひっそりと、存在している。


(追記:歌 – LA CHANSON DES MISERABLES by Patricia Kaas)

『男と女』など数多くの作品を生み出しているクロード・ルルシュ監督、『気狂いピエロ』などフランスの名優ジャン・ポール・ベルモンド。

善と悪、なんていうと仰々しく他人事。それならば正と負でもいい。人はみんなその正と負を自分のなかに持つ。正常な人間には正だけもいなければ負だけの者もいない。自分の中の正と負と社会のそれと、みんなその合間を行ったり来たり、流されては流されてはならぬと模索しながら生きていく。今も昔も人間の本質にあるものは変わらない。

人の世の悲しさ、切なさ、欲望、失望、希望、未来、絆、が凝縮された174分。赤い腕章のドイツ軍将校の、息を飲むほどに鋭いピアノ(おそらくワーグナー)の旋律は彼らのあの歪みきった世界での揺るぎなき正。天使のように清い少女たちの奏でるピアノは夢と愛と希望の光、救い。1940年代のフランスでナチの手から逃れようとする裕福なユダヤ人一家とそこに関わる人々と、ヴィクトル・ユゴーのあの『レ・ミゼラブル』が交差する。逃走するユダヤ人一家を助けたジャン・バルジャンも、そして彼に絡む刑事もまた常に自らと社会の正と負の狭間を揺れ動く。刑事の自殺は彼自身の中の正が勝ったから?それとも負?逃亡中に騙され待ち伏せされナチの一斉射撃に倒れる社会的に負とされたユダヤ人たち。その銃撃を逃げ延びたユダヤ人一家の主人を助けた心やさしき農夫とその妻は、やがて人間の誰しもの中でわき起こる煩悩に翻弄され、それまで彼らが保っていた正は影を潜め、変わりに恐ろしいまでの欲という万人に潜む負に包み込まれ、ついには悲しき崩壊を迎える。

クロアチアのホロコーストに触れて以来わたしの中でテーマになっている「誰もがなりえる加害者への道」そうなること、ならないこと、そんなことなども改めてこの映像を通して考えさせられた。テーマがホロコーストだけに留まらないこの映画はこれまで観た映画の中でも群を抜いている作品にも関わらず、残念ながら日本ではDVDにもならず購入もレンタルも不可能(ビデオはあるみたいですが)。どなたかDVD録画、されませんでした?(笑。うちのはなぜか再生オンリー・・・)

(ちなみに本日のプチ雑学:監督ルルシュと逃げ延びたユダヤ人男を演じたミシェル・ブジュナーは共に実生活でユダヤ人。映画のシーンでは、逃亡しようと地下の倉庫に集まったユダヤ人たちの男性たちが一団となり壁に向かって祈りを捧げるところがあるが、ユダヤ人男性は毎日祈りを捧げることが義務づけられており、祈りを捧げる時はかつてユダヤの神殿があったエルサレムの方向に立って行う。まだ日暮れ前らしいので時間的にみてあのシーンはミンハ(午後)の祈りでしょうか。)

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『レ・ミゼラブル 輝く光の中で』(1995年製作 仏)” への4件のフィードバック

  1. えー、そんなんやってたんや~、残念、見損ねた。
    『狂い咲きピエル』。ほほぅ、私の知ってたタイトルとは違うわ。
    邦題、配慮して変えたのね。
    でもなんのこっちゃワカランようになったね(爆)。
    ちからく師匠のユダヤ関連映画紹介、楽しいです。
    DVDにもなってない作品はすぐにはなかなか見られないけど、
    そうでない映画もたくさんあるよね。
    メモッておいて時間ができたらツタヤに走るべ。
    んで、ひとり映画祭。なんちって♪。

    1. おやび〜ん

      ぎゃははっ!大まちがいっ!『狂い咲きピエル』!?
      爆風スランプかっての・・・。
      多いわ〜、最近こういうの。
      トシかね?
      ニホンゴがついていかんってのも。

      このああ無情、DVDにするべきですな。
      サントラもグー(でも日本ではたぶん入手不可能)。
      このまま埋もれてしまうにはもったいなさすぎる。
      こういう映画を放送してくれるテレビ局にバンザイ。

      この前、うちの近くのツタヤに行ったけど、
      二度と行かんな、あそこ。
      カテゴリー分けがめちゃくちゃ=探し切れない。
      しかもそれほど映画が置いてない・・・テレビドラマが多い。
      郵送してくれるサービス、あれよさそう。

  2. 観たぞ、老いたベルモンドが普通のおっちゃんになってるのが嬉しいやね。
    フランス映画の流行った頃、映画館が我が家みたいに通ったもので、ブリジッド・バルドーに恋をしたっけな。当時の墓にツバをかけろなんて題名まで覚えているのにさ、一昨日の天気が思い出せないよ。

    1. かっちゃーん

      おっ、さすが映画通のかっちゃん!
      うちもフランス映画、好きです〜。
      そうそう、ベルモンドおっちゃん、ええ味出してます。
      なんていうか、優しそうなまなざしがすてき。
      ブリジッドバルドー、キュートでしたよね〜。

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