カテゴリー: 混沌の文化

日常会話

それは昨日のことじゃったぁ。朝6時半に起床、7時半過ぎにはエルサレムの中央バスステーションに到着。ベン・グリオン空港まで45分ほど朝のイスラエルをバスに揺られ、そこからタクシーでオフィスまでヨッコラセ。オフィスに着いたのは9時20分。長い長い旅じゃったぁ。

オフィスのドアがジーッと音を鳴らして開いた。プロジェクト・マネジャーのエレズがブルーのシャツで「待ってたよ!!」とにっこにっこ顔。「さささっ、僕のオフィスへどうぞ~」と間一髪入れずに拉致される。

「さて、良いニュースと悪いニュース、二つあるけどどっちを先に聞きたい?」

でたー・・・。どっちでもいいよ。んじゃ、悪いのから。

「ごめん!!!今日、君の出番なし!来てもらわなくてもよかったのだな。手違いだったんだよねえ・・・わるいね!」

しめしめ、コレで今日は仕事せずにすむぞ~い。コツコツ電脳空間から開放だ!

「あ、そう~。いいよん、別に」

「ほんとに怒ってない?よかった・・・。で、よいニュースは、今日の日当は払わせてもらいまっせ」

おお、ラッキーではあ~りませんか。それなら毎日でも間違えて呼んでくれたらいいなあ。と、まあ、そんなこんなで、またまた来た道をタクシーに揺られ、ベン・グリオン空港まで戻る。

12月と言えどもまだまだ暖かいイスラエリー・ブルーの空の下、道の脇には延々と農園が続き、やっぱりイスラエルって農産業国なのねえと、少々季節を感じられるような柿がおいしそうに熟れていた。コレがタクシーでなければキキーッと車を停めて、ひょいっと柵を越え、ポケットに一つ二つ柿をしのばせているだろうなあ、なんて思っている間に空港に到着。エルアル航空の大きな倉庫やら、DepartureやArrivalの文字、空港に来るとなぜかワクワク。色々な国の言葉や、鞄のひとつひとつ。そこにはそれぞれの人生のストーリーがあるのだろうなあ、と、あれっ、書く場所がちと違うか・・・。

そうして、到着ゲートからエルサレム行きのシェルートに乗った。が、私の他には乗客はたったひとり、ブロンドのリカちゃん人形よろしいロシアのオネエサン。午前中にイスラエルへ到着する飛行機は少なく、普通は乗客が10人集まらねばシェルートは出発しないから、これは待てど暮らせどシェルートは出発しそうもない。うーむ、それならここから電車に乗った方が早かったかも・・・と、何台も停車している空っぽのシェルートの脇にたむろしているおっちゃんたちの一人に聞いてみた。

「んねー、いつ出発するん?」

「あ~、ほれ、見てみぃ。今さっきラビも到着したこっちゃしな、今みんなで祈ってんにゃんか、その後で出発やでぇ」

乾燥して塩のついたひまわりの種を、ガリガリとかじっては殻を吐き出しながら、面倒くさそうにおっちゃんが答える。シェルートの窓からひょいっと顔を出すと、柱の影では白髭のラビといかにもイカツく、スピリチュアリティなどまったく無関係のようなおっちゃんたちが、大きなお腹を揺らしながら腕とおでこにテフィリンを巻いて祈りを捧げていた。ほー、やっぱり変なところでユダヤ人なんだなあと、これまた変に関心。毎日空港からエルサレムの間を走り抜けるおっちゃんたちは、無事に走り抜けられるよう、やはり祈らずにはいられないのだろう。

そして待つことさらに10分ほどが過ぎ、私とリカちゃん人形の二人だけ、プラス運転手の友達のこれまたさらにイカツイおっさんアルベルトを乗せて、やっとこさ、新しくできた空港の出口をシェルートは出発した。が、あらら、幹線道路に出る以前に大渋滞。なんだこりゃ!と思っていると、どうやら探し人をしているらしい。サングラスのセキュリティーのニイサンが、一台一台車の中を覗いて怪しげなアラブ人がいないかを確認中。そんなこんなで、いやあ参ったなあと思いつつ、すでにもうお昼に近いではないか。

おっ、そうだったそうだった、おやつに持ってきたドーナツがあったんだ。イスラエルでの通勤途中にはおやつを持ち歩く私。だって、こんなふうに一体どこでどう時間を食うかわからないのであるからして。イソイソと遠足気分で鞄の中からドーナツを取り出して、むしゃむしゃ、おいしいなあ。と、途端にシェルートが走り出した。ぽろーん・・・、ドーナツころころドーナツさん。ええ、落ちましたよ、ベージュのスカートの上に、べったりとチョコレートの付いた側のドーナツが。が、そんな時こそ「アズマ?イエ・ベセデ~(それがどうした?何とかなるさ~)」とイスラエル式に自分を慰めてみる。

通常このシェルートは、テル・アヴィヴ-エルサレム間の幹線道路をびゅーんっと走り抜けるのだが、昨日の運ちゃんは裏道走りの名人とみた。彼がびゅーんっと走り出したもうひとつの道、その道の両側は、かつて旅したインドか、まだ見ぬアフリカの平原のような乾いた荒野が広がり、アラブの小さな町が次々と点在。モスクの塔がにょきーんっと遠くからもよくわかり、荒野をでっぷりとしたアラブのおばちゃんが羊を追い、牛が放たれていた。うわーお、やっぱりイスラエル、おもしろいなあ、通勤しながら瞬時に心は旅人になれちゃう。

そして、そんなエキゾチックな風景を一時間ほども走り抜けると、手前に大きく砦のようにそびえ立つのは、我が街、エルサレムの都。なるほど、この道を走り抜けるとエルサレムの裏側の玄関から入ることになるのね。シェルートがエルサレムに入ると、アラブの風景から打って変わってそこはひげもじゃんズの街。あっちもこっちも黒い服を着た人たちがゴミの舞う通りを急ぎ足で行き交う雰囲気が、これまたインドかどこかの混沌に類似。そこからシェルートは東エルサレムへと、ロシアのリカちゃん人形のために走り抜けた。ジャカジャカジャカジャカ、ベリーダンサーが現れそうなアラビックな音楽が鳴り響き、原色ピカピカの看板、スカーフの女性たち、一挙にアラブ・イスラーム・ワールドへと突入。ブロンド・ロシアのリカちゃん人形がそんな異次元でシェルートを降りると、運ちゃんの友達アルベルトおっさんが言った。

ア:「おー、おまえよぅ、なんでこんなトコに入ってくんねん、見てみいな。アラビム(ヘブライ語でアラブの複数形)ばっかりやぞ。入ったらまずいやろが・・・」

運:「なーにが、まずいやねん!おらぁ、ここには一日に3回も4回も入ってくらぁ。それにあんなリカちゃん人形をアラビムのど真ん中に放り出すんかい!できねーね!ったくよぅ、お前ってばさ!」

ア:「だからよ!アラビムばっかりの街にはオラァ、入ってこねえよってこった!でなあ、そこのさあ、あ、ここここ、ここやねん。ここのピタとホムスがむっちゃうまいねんで。おまえ、今腹減ってる?食うけ?」

運:「何でやねん、アルベルト!お前ここの街には来いひんって言うたんに、しっかりどこがうまいって知っるやんけ。が、あかーん!!!アラビムの作るもんは、おりゃ、食わんぞ!お前が欲しけりゃ車停めてやるけどよ!」

ア:「何があかんねーん!ピタはピタやろ?!なんであかんねん!ここの、うまいねんで!」

運:「はー、お前、そんなことも知らんのけ?ちょっと、ネエチャン、あんた、わかるやろ?こいつに言ったってくれよ、何であかんねん?」

おー、黙ってこの掛け合い漫才を聞いていたらば、こっちに振ったか、運ちゃんよ。

チ:「そりゃ、アルベルトはん、アラビムの作るのはカシェルやおまへんがな」

運:「へーっへっへっへ!!ほらみろよ、アルベルト、このネエチャンですら知ってるやんか。お前はなんでも知らなさ過ぎや!!」

ア:「なんやて~!!ピタは小麦やんけ!小麦は小麦や!アラビムもイェフディム(ユダヤ)も小麦は小麦やんけ!何がどうちゃうねん!けー!!・・・でもなあ、オレ、ほんまはそれ、はじめて聞いたわ。そうか、アラビムの作るのはあかんのんかあ。ふーん・・・そうかぁ」

運:「あーあー、お前はよぉ、はじめて聞くことが多すぎやで。聞くことすべてはじめてやんけ!で、ネエチャン、あんた、ヤパニット(日本人女性)やろ?」

チ:「うん」

ア:「えー!!ネエチャン、ヤパニットか???」

ずずずずいっと、アルベルトおっちゃん、車内を腰を曲げて前進。私の顔を覗き込む。

「いや、ほんまや。あんた、ヤパニットやったんや。実はオレ、この前ヤパン(日本)に行って来てんで!ほら、この前イスラエル船の事故あったやろ?あの関係で行って来ててんけど、一ヶ月もおったんやで!オサカやろ、コベやろ、そんでもってキョトや!なあ、ヤパンにもイェフディムはいてるんやなあ、せやろ?おい、おまえ、知っとったけ?」

運:「アルベルト、お前はドアホか!!どこのヤパンにイェフディムがいてるねん!考えてみんかい!」

ア:「なんやて~!!!世界中どこにでもイェフディムはいてるわ!当然ヤパンにもいてるやんなあ、ネエチャン!」

チ:「いやいや、アルベルトはん、元々はいてまへんよ、日本人のイェフディムて。でもシナゴーグはあるよ、神戸と東京に」

運:「ほれ、いてへんやんか。見てみぃ!!!!」

ア:「ちゃう、ちゃう!シナゴーグがあるて、このネエチャン言うてるやんか!そやし、日本人のイェフディムが行くねんや!!イェフディムが行かんかったら他に誰が行きよるねん、えー!!アホはおまえじゃ!」

うーん、だんだんと耳が痛くなってきたぞ、大音量のおっちゃんたちよ。なんや「こち亀」の両ちゃんと部長さんの会話みたいやなあ。

運:「お前はほんまにアホやのー。ヤパンにはぎょうさんイスラエリーがいてるやんか。道端で物売ったり、そんなやつらはいよんねん!ほら、これもはじめて聞いたんやろ!ったくよー!」

ア:「ひょー!!まじかい、日本には根っからのイェフディムっていてへんのか、アー、初めて聞いたなあ。ほんまかぁ・・・。で、ネエチャン、日本に行く時は飛行機やろ?何時間かかんねん?」

チ:「そやねえ、ドアからドアまでで30時間ほどかなあ」

ア:「おー、アホ言うな!あり得へんて!!!ここからやったらヤパンまで12時間くらいで行くわい!」

運:「12時間やて?!行くかいな!!ネエチャン、ヨーロッパ経由やろ?ほれ、そうやって言うてるで、ったくおまえはよ・・・!!」

ア:「ちゃうちゃうちゃう!!!何言うてんねん!オレはシンガポールまで飛んでやねえ・・・」

チ:「なあ、運ちゃん、話の途中で悪いけど、ほら、私のうちここやねん。ここで降ろしてくれる?」

キキーッとシェルートは自宅の前で停まりドアを開けてくれたが、おっちゃんたちの口は止まらない。

運:「お前はシンガポールまでどんだけかけて飛んでん??ほれ計算してみい!!!あ、ネエチャン、ほなさいなら。ほら、アルベルト、計算してみいや、シンガポール・・・そこからトキョ・・・」

ア:「エーット、エーット・・・9時間でシンガポールで、その後が・・・」

チ:「ほな・・・、さいなら~」

シェルートからぴょんっと降りまして、ほー・・・。私が降りたのも関係なく、まだまだ二人のドツキ漫才は続いていた。なんや、やっぱりエルサレム人って、こち亀というよりもコテコテの吉本劇場やなあ。おっちゃんら、そのままで十分新喜劇やワ、と妙にうれしいような、妙な旅の疲労感で帰宅したのでした。

で、こんなのんきなことを書いてはいるものの、今日、テル・アヴィヴから車で30分ほどの地中海沿いの街ナタニヤで、久々の自爆でございます。テレビをつけたら、黒い覆面のタコボウズ・ハマーたちが演説しておりました。ったく何考えてんだか。今テレビで流れているニュースではシャロンさんが「イスラエルは忍耐の時・・・云々」と語っておりますが、さてさて。

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